なんちゃらの箱。

ふときずくと目の前に梯子がぶる下がっていた。特に何も考えず梯子を上り始めた。

それが始まりだった。もしかしたら終わりだった。

梯子の周りは全て真っ黒で、上を見ると小さな点のような光だけが見えた。
どうやらこの梯子はそこに向かって伸びていた。 その光まですぐに行けるような気がした。
それが全ての間違いだった。

上ってから少し経った所で自分以外にも梯子を上っている者が居ることにきずいた。
とにかくそいつを追って上っていった。追いついたところで僕らは話した。奴は僕らの取り囲まれている環境について考えていた。梯子を上る意味、光の或る場所に何があるのか。僕は何も考えていなくてただ上らないといけないからという考えで上っていた。僕は驚き、色んなことを考えた。それから奴の後ろについて上っていった。すると少したってから奴は「よく耳を澄ましてごらん」と言って消えた。 

僕は言葉がでなかった。胸が痛かった。よくわからなかった。上り始めた時と変わらず一人なのに暗闇が前より濃くなったきがした。もうこんなふうにはなりたくなかった。

僕は上るのをやめた。

なにもかも馬鹿げているきがした。消えたあいつを憎み、この梯子を憎み、そんな自分をもっと憎んだ。するとだんだんそんな考えも消えて、いつしか自分が薄れていった。そんな時ふと奴の言葉が浮かんだ。

水の音がした。

足元から聞こえてくるみたいだった。でもそんなことはどうでもよかった。そのころからだった。梯子の上の方から色んな声がしてきたのは。でも僕の耳にはまったく届いていなかった。
僕は梯子の間の暗闇をぼんやり見ているだけだった。

足の裏に水が触れた。 

そこでやっときずいた。水は段々上昇してきているようだった。それでも僕は動かなかった。
きずくと水は僕の足をすっぽりとのみこんでいた。段々足の感覚は消え、どうやら足は腐りかかっているようだ。

そんな時笑い声が聞こえた。それは色んな種類の笑いを含んでいた。

その声は僕の耳にもまだ聞こえるようだった。その声は馬鹿にしているようだったり喜んでいるようだったりして、僕の胸は痛んだ。

でもその方向に進みたかった。その声は僕を色んな形に変えた。もうなんだってよかった。

次の梯子に手をかけてみた。